違いますよ、違いますよ、ぼくが今度帰ってきたのは、庭の奥からではありはしませんよ、ぼくは世界の果てから帰ってきたのですよ、それでぼくは苦い孤独の匂いを、熱の砂漠の渦巻きを、熱帯地方の目ざめるばかり美しい月かげを身にしみこませて帰ってきたんですよ! すると、あなたはおっしゃるのだった、とかく男の子というものは、駆けずりまわったり、難儀したりすることで、自分を強いと思っているものなのですよ、と、こう。違いますよ、違いますよ、老嬢よ、ぼくは裏庭よりももっと遠いところを見てきました! 裏庭のやぶかげなんか、ものの数でもないですよ! あんなものなんか、あちらの砂漠や岩山や処女林や大沼に比べたら、ものの数にもはいりはしません。あなた知っていますか、人と人とが出会うと、いきなり鉄砲を向けあう土地がこの世にあると? あなた知っていますか、凍りつくほど寒い晩、屋根もなければ、老嬢よ、ベッドもなければシーツもなしで眠らなければならないような砂漠が存在すると言うことだけでも……。