野矢茂樹の「ここにないもの」の冒頭に書かれた詩について,「ここにないものの名を呼ぶ」で検索しても引っかからない.傑作だと思うんだけどな.重要なのは

呼ばれたものの息に
呼んだもののくちびるがふるえ

の部分で,呼ばれたものの「音」ではなくて「息」によって呼んだもののくちびるがふるえるところが引っかかる.呼んだもの(私)と呼ばれたものは同一人物で(その同一性は非自明),そして「私」は不在の私の名を呼んでいるのではないか.