食事を大皿に盛って皆で取り分ける,あるいは,一つの器に入れられた酒を皆で飲み回す,というのは,元来不可分のもの共有することで共同体の団結を維持するという意志/意味の発露である.と書いたところで違和感が伴う.原因は明らかだ.私にとって料理も酒も不可分のものではない.多くの日本人にとってもそうだろう.日本人にとってパンは可算名詞だ.数えられるし,分けられる.water が不可算名詞だと知って腑に落ちなかった人は多いのではないかと思う. a cup of water と言ったときに意識の焦点はコップにあるのか水にあるのか.

真に共同体に所属を見いだすのは日本人でなく欧米人だと思う.敵討ち,復讐を彼らは日常的に行っているではないか.侍の敵討ちは,そういう制度の下で気乗りしないまましていたのではないか.

規範を意識し続けなければ従えない行動などその程度のものだ.殺すな,尊べと言われなければそうできないとは虚しい限りである.そして従うことすら出来ないのである.聖書は人類の歴史上もっとも数多く書かれた書物らしいが,それはもっとも数多く無視された書物であることを意味する.